「その時、ダビデはひじょうに悩んだ。それは民がみなおのおのそのむすこ娘のために心を痛めたため、ダビデを石で撃とうと言ったからである。しかしダビデはその神、主によって自分を力づけた。」 Ⅰサムエル30：6
旧約聖書に登場し、イスラエル全盛時代の礎を築いたのがダビデ王です。彼の生涯を見るときに、本当に多くの困難な状況に出会いました。上記の箇所は、彼が戦いに行っている最中に彼の町が襲われ、彼の家族をはじめ、町の若者が捕虜になり敵に連れ去れてしまうという事件が起こりました。町の人々はその責任をダビデに負わせ、彼は殺されそうになります。自分の家族を奪われ、人々からは孤立してしまう状況の中で、彼がなしえた唯一で最善の方法、それが「主によって自分を力づけた」ということです。
人間は、状況が大変であればあるほど、他人からの励ましや慰めを必要とします。その励ましや慰めは多くの場合に、自分の中にある不安な気持ちを払拭し、力づけられるからです。そのことを思うときに、私達も様々な試練のただ中にある方々に、慰めや励ましを語らせていただく者とさせていただきたいものです。しかし同時に、人間の心の中には、神でなければ満たすことのできない領域があります。それが霊の領域です。肉体が精神の状態に大きく影響されるように、肉体と精神も霊の状況に大きく影響されます。神との交わりは、この霊の領域に回復と活力を与えるものです。それを通して人間は、全人格的に力づけられていくのです。
以前、金田福一先生という素晴らしい働きをされた牧師先生にお会いしたことがあります。先生は、結核と極度の貧困の中、奥様と子供達を養うために仕事をすることもできない自分自身に絶望していたそうです。しかし先生はある時、自分に失望するのではなく、状況に失望するのではなく、ただ神によってのみ力をいただき、神によってのみ希望を見出そうと決心されたそうです。その夜に食卓に並んだ質素でわずかばかりの食事を前に、それまでは自分のふがいなさばかりが見えていたのに、そこに主にある喜びがあることを見出し、一言、「感謝しようではないか。」と語り主に向かって感謝を捧げられました。以後、先生はどのような状況の中でも、主によって力づけられる歩みをされてこられたのだそうです。
イエス・キリストは、聖書の御言葉や祈りの中で働き、私達を力づけてくださる方です。そのお方と共に歩み、日々、与えられた状況の中で、喜びと感謝をいただいて歩ませていただきましょう。